2022/10/10 14:00
以前、イタリアは食に保守的だという記事を書きましたが、
日本人は世界的に見ても食に積極的、また、こだわりが強いと思われているようです。
いろいろな面で、まだまだ国際化していないなどと言われがちな日本ですが、「食」に関してはズバリ日本はかなり国際的です。
街へ出れば、和食、中華、韓国、エスニック、イタリアン、フレンチ、韓国、エスニック、アメリカ系ファストフードなど、様々な料理が食べられます。
世界的には毎日同じようなメニューばかりを食べている民族が多い中で、日本人の食は異常なまでに多様なんだそうです。笑
食に対してオープンな国・日本
イタリアの食文化の記事でも少し書きましたが、まず海外へ行くと自国の料理以外のお店はほとんど見受けられません。
たとえ自国の料理ではない、外国料理のレストランがあっても外国人による現地に住む外国人のためのレストランであることが多いのです。
その点日本はどうでしょうか?
世界各国の料理を提供する専門店がたくさん!
当社の直営店舗のある下北沢でも、タイ・中国・トルコ・インドなどその国出身のシェフの店、日本人シェフのイタリアンやフレンチなど和食以外の本格的な飲食店が多数あります。
もちろんそのレストランには、各国出身のお客様だけでなく、日本人のお客さんや常連さんも多く通っています。
欧米人は旅行先でも自国の料理屋さんを探して食事をする人が多いので、日本では自国の料理店がすぐ見つかることと、自国以外の料理を好んで食べる日本人を見て、食に対して積極的でオープンだと思われているようです。
なんなら毎日違うものを食べたりしてちょっと不思議な国民性だなくらいに思っているようです。
一般家庭でも和、洋、中など、異なる国々の料理を日常的に作り分けます。
さらには、和洋中が国の垣根を超えて同じ食卓の上に登場することもしばしば。
うちのおかんはスパゲッティに味噌汁、洋風のサラダにお刺身など渾然一体とした食卓は日常茶飯事でした。
このように多種多様な料理を、誰もが日常的に楽しむなどというのは、世界広しといえど珍しいことのようです。
ではなぜこんなにも他国の料理に寛容なのでしょうか?
宗教的なこだわりの低さが与える影響
日本人の多くは特定の一神教を信じず、なんとなく多神教の人が多いです。
一神教とは一つの神を信じる宗教のことで例えば、キリスト教、仏教、イスラム教、ユダヤ教など。
というか特に信仰心があるわけでもない人が多いので多神教でもないですかね笑。
たとえば年末になるとクリスマスを楽しんだと思ったらすぐ大晦日に除夜の鐘を聞いて、元旦に神社に初詣に行ったりしますよね。
ここではキリスト教と仏教と神道のイベントを立て続けに味わっているのです。
結婚式も日本人はキリスト教徒でなくてもチャペルで行い、アルバイトの白人の前で永遠の愛を誓ったりしますもんね。
他国では宗教の戒律によって食べてはいけない食物があったり、食べてはいけない曜日や期間があったりなど宗教的な観点から特定の食べ物や、他国の文化を嫌っていることとは対照的に、日本人の多くは宗教へのこだわりが低いため、食べ物にも宗教的なこだわりを持ち込まず、美味しければ何でもよし!
おいしければ食べるという感じなのかもしれません。
歴史的な背景が与える影響
開国から幕末・明治にかけて欧米各国の技術の進歩や経済力などの違いを感じたことにより、政治的にも文化的にも「欧米を見習え、欧米を追い越せ」みたいなことが盛んにいわれていた日本。
明治政府の近代化政策により、欧米の文化をどんどん取り入れて民衆の生活も変化してきました。
明治元年には「1,000年以上にわたり禁止されていた肉食が解禁となったことで肉料理が中心であった西洋料理が日本人に受け入れられていったと考えられます。
西洋の文化などを必死に受け入れた背景には国としての劣等感というだけでなく、鎖国などで抑えられていた外国への興味、あこがれもあったのではないのでしょうか?
また第二次世界大戦敗戦後は、アメリカからの統治により自分たちの意志とは関係なくアメリカ的な食文化を受け入れていったことも、他国の料理や食の変化に対して柔軟な日本人を生み出していった要因ではないでしょうか?
日本人らしい性格が食の多様性を生んだ
このように欧米の料理が一般家庭の日常の食事に登場するようになったのは、明治期以降、特に戦後になってのことです。
それでもすんなりと何でも食べたわけではありません。
馴染みのない食材や料理ばかりでとまどうこともありました。
どうにかして美味しく食べるにはと考えた日本人。
第一段階として、西洋の食材を和風料理へ導入することから始めました。
慣れない素材に対する恐れを紛らわすために、まずは食べなれている調理法で処理し、馴染みやすい味や姿へと変化させることで口にしていったのです。
その中で生まれた日本人の大発明が「すき焼き」などといった料理です。
しかし歴史的な尺度からみれば、最近まで禁止されていた肉食。
鶏や猪肉などは受け入れられやすかったようですが、牛肉や馬肉などは耕作用の家畜ということもあり食べることにかなりの抵抗があったようで、忌み嫌う人が多かったそうです。牛肉を食べたものは神仏を拝むことができないという考えも広く見られました。
こうした牛肉反対の根強い風潮に対して、啓蒙のための本も出版されるようになり、西洋化を進める政府の動きもあり牛肉を食用にする風習はだんだんと普及していきました。
食べたくなければ食べなければいいのにと私なら思ってしまいますが、一部の地域では「国がこんなにいいものだと勧めているのに食べないということは、文明開化を妨げているだけでなく、政府の方針に逆らうもので役人から諭されなければいけない!」としていたところもあったんだそうです。
……半ば、脅しですね。苦笑
でもあれですね、国の言うことに従おうとする真面目な国民性、欧米諸国の技術だけではなく調理に関しても和魂洋才の精神でとりいれようとする姿勢が、なんとも真面目で勤勉な日本人らしい感じがしますね。
食のアイデアマン日本人
その他にも欧米の調理方法に少しだけ日本の調味料をたして日本っぽい風味に変化させたり、食材を日本のものに変えて作ってみたりと試行錯誤する中で、日本風の西洋料理として日本人の嗜好に合わせた新しい料理が誕生していきました。
有名なところでいうとエビフライやオムライス、ナポリタンなどの日本人が愛してやまないメニューばかり!
当時のコックさんにありがとうと伝えたいですね\(^o^)/
また日本と西洋の素材や調理法を折衷させる料理も誕生しました。
和洋折衷料理は数多く見られますが、最も身近なものの一つが、文明開化の時代に作られたアンパンでしょう。
そして、その後に作られたジャムパンやクリームパンも、日本独自に考案された菓子パンです。
よく言えば、飽くなき探求心と、何でも自らのスタイルに組み込んでしまう適応性。これらが日本人の国民性などと決めつける気はありませんが、興味深い習慣であることは確かですね。
新しいものに順応し、少しばかり工夫して、より良い形で自分の生活の中に取り入れるということ。
そんな考えが根底にあることが、日本中に美味しい料理が溢れ、どんな国の料理に対してもオープンな日本人を形作っているのかもしれません。
食事に驚くほどのこだわりをみせ、他国の料理も自国の料理も、更においしく食べることに長けている日本人。
現在はグルメ大国として世界中から注目を集めています。
次回はそんなお話を書こうかなと思います。
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